神懸(倍上げ谷)

680m

山域:鈴鹿山脈

2000.05.14



井戸谷入渓地点の小滝

倍上げ谷左俣8m滝

倍上げ谷右俣10m滝

ゴルジュ出口の滑滝

倍上げ谷支流15m滝
風薫る5月、世間では新緑が美しい時期である。 気がつけば前回の宮指路岳から、はやくも一カ月が過ぎようとしている。 前日の予定が諸事情によりキャンセルされた為、「体力は充分・体調は万全」と言いたい所ではあるが、日頃の運動不足と不摂生により「体力は60%・体調は62.5%」という所であった。 毎度ながら己の力不足をF本氏のサポートで補って頂く事をあてにして、最近恒例の鈴鹿直行便に乗り込んだのであった。 本日は短距離・低難度ながら遡行である。 従って己に自信の無い私としては極力荷物を軽量化する事に努めたつもりであったが、途中のコンビニで調達した食料と水を詰め込んでみるといつもとあまり変わらないようであった。 前日の天候から今日も荒れ気味の天気かとも思ったが、時折青空が覗く中を集合場所である鳥井戸の駐車場へと到着した。 そう、本日は珍しくF本氏の他に同行者があるのだ。 まだ20代ながら鈴鹿に興味があるという珍しい青年である。鳥井戸の駐車場はボーイスカウトやらポルシェの兄ちゃんやら様々な人種が入り交じっていたが、山が目的の人は少ないようであった。 待つ事しばし、それらしき車がやって来たが、何故か駐車場を通り過ぎて行く・・・。 場所を間違えたようだ・・・。 すぐに同じ車が引き返して来て、めでたく合流となった。 初対面の挨拶と本日のコースの説明をしてから、早速に出発となった。

足元を登山靴にするか渓流シューズにするか迷うが、それほどの悪場もないだろうという予測と滝があっても全て巻けばいいとの考えで登山靴で行動する事にした。 いつも入浴客で賑わう希望荘の裏を通って、朝明へ抜ける東海自然歩道を歩いて行く。 右手の流れが本流にあたる井戸谷で、本日の目標である倍上げ谷はこの井戸谷の支流になるのだ。 舗装された林道を左に分けると、東海自然歩道も地道に変わりようやく山にやって来たという実感が出てくる。 何度か橋を渡り徒渉をしながら遡行図を確認して、谷の取り付きを探す。 橋が懸かる奥に数mの小滝が連続している場所を入渓ポイントと考えたが、倒木が多いのと意外に滝が登りにくそうなので、この滝を巻いて沢に入る事にする。 橋を渡り自然歩道を進むと、やはり同じような事を考える人がいるらしく、踏み跡が沢へと続いていた。 水量は少ないので、沢の中をバシャバシャやりながら進んで行くと、すぐに左から倍上げ谷が合流していた。 左上には新しいガードレールが見え隠れするのが、とても気になる・・・。 すぐ植林地を抜けて谷が開けて来たと思ったら・・・。 前方に遡行図にあった小滝らしきものが見える、しかし更に前方には巨大な堰堤が行く手を遮っていた。 とても巻けそうにないので、左手の伐採地を抜けて林道に逃げると、並の県道・国道よりよさそうな舗装路がかなり先まで続いている。 谷筋を覗くと井戸谷から倍上げ谷にかけて巨大な堰堤群が谷を寸断して鎮座していた。 気を削がれながらも倍上げ谷に戻るべく林道を進むと、左手に広場があり谷が二俣になっている。 左俣・右俣の双方に10m程の滝が懸かっている。 遡行図にある倍上げ谷の二俣のようだ。 ここで私は恒例の撮影タイムを頂き、左右の滝を撮影する。 F本氏はこの時間を利用し林道の偵察、後輩の指導に余念が無い。 毎度毎度と恐縮しながら、私にしては早めに撮影を切り上げた(つもりだが・・・)。

さて行動再開、滝の右手の斜面に踏み跡があったので、急斜面を木の根につかまりながら滝を高巻きする。 滝上で沢に降り立つと暗いゴルジュの中にいた。 ゴルジュの出口の滑滝(?)をジャブジャブで抜けると、傾斜のゆるい開けた明るい谷筋となった。 明るいといっても標高が低いせいか、前回の大岩谷の源流のようにカラッとした明るさではない。 どちらかというとジメッとした明るさ(?)である。 羊歯やらイバラやらが繁る軽い藪をかき分けながら、相変わらずのジャブジャブで遡っていく(同行者二人は陸地を進んでいたようだが)。 足元には名も知らぬ小さな白い花が群生していたりしてなかなか面白いのであるが、天候が悪化しつつあるせいで湿度が高いのかひどく暑いのである。 最近、かなりの汗かきである私は、転倒して沢にはまったかのように汗でビショビショになっていたのであった。 この辺りは沢が左右に分流(?)しているので、その中州のような場所を進んでいくのだが、左岸より流入する支流に落差15m程の滝が懸かっていた。 F本氏のご好意でちょっとだけ撮影させてもらうが、支流の支流ともなると流石に水量は少ないのであった。 時折、古い炭焼き釜跡等があるが、基本的に樹林帯の中の平流に近い流れなので、風景に変化が無い。 そんなに時間は過ぎていないはずなのに、ひどく時間がかかっているような錯覚を覚え始めた頃に二俣になった。 ちょいとばて気味になって来たので、ここでちょいと休憩を頂く。 まったく、同行者にはいい迷惑であろう・・・。 

休憩中に観察した所によれば右俣の方が水量が多く本流に見えたが、高巻きも困難そうな滝が見えていたので安易に左俣に入るが、やはりこちらもすぐに登りにくい滝が控えていたのであった。 このあたりの沢には古い石組の堰堤(オランダ式と言われるらしい)があり、歴史を感じさせてくれる。 こんな谷の奥深くにも、かつて人が入っていたのだ。 炭焼き釜もそうだが、改めて鈴鹿山脈と人間との関係を感じさせる光景であった。 順調(?)に進んで行くと、直登が難しそうな滝が現れた。 左のガレた涸れ沢を少し登り、トラバース気味に高巻きを試みるが、足元が少し危ないので慎重に進む。 この先にある古い石組の堰堤は、傾斜もあり両側には苔が生えていて滑るので(自分は)苦労してしまった。 源頭部が近づき水量に反比例して沢の傾斜は増して行く。 (自分だけは)ゼイゼイ喘ぎながら一歩一歩ゆっくりと先を目指していった。 源頭部の詰めはいつも苦しい。 ザレた斜面を同行者の半分以下のスピードで通過し、稜線へ到達したのであった。

稜線はかつて峠だったらしく左右に細い踏み跡が続いている。 本日の目的である神懸のピークを求めてF本氏らが右手の稜線に偵察に赴く。 私はというと、ちゃっかり休憩を決め込ませていただいておりました。 しかし、誰もいない。 人の声すらしない。 本当に静かである。 御在所あたりの鈴鹿中心部からは考えられない静けさである。 やはり山でも滝でも人は少ない方が落ち着けるなあ等としばし至福の時を過ごしたのであった。 そうこうしているうちに、偵察隊が戻って来た。 神懸のピークへは左手の道のようだ。 殆ど獣道と化した踏み跡を10分程で神懸(と思われる)ピークに到着した。 山頂部によくある「何とか山岳会」「登頂記念」だのといった煩わしい標識の無い本当に静かなピークであった。 よく見ると左右に同程度の顕著なピークが見られ、本当にここが神懸かとちょっと不安を覚えたが、帰宅後に文献を調べると神懸は三個のピークに分かれているそうで何となく納得したのだった。 しばしの休憩を取り下りにかかる。 杠葉谷を下る予定なのだが、一度も通ったことのない谷の源頭部を発見出来るかどうかがポイントであった。 それらしい場所を下降し始めたのだが、下れども沢にたどりつけず、厳しい急斜面に直面したので、神懸に登り返したのであった。 結果的には敗退となったが、勝手のわからぬ場所で無理をする事も無いし、それほどに価値のある谷でもなさそうだったので、これはこれでよかったのであろう。 神懸でしばしの休憩を取った後、登って来た倍上げ谷を下る事にする。 下降点の峠に付く頃には、無情の雨が・・・。 あわててカメラをザックに詰め込み、防水対策としてザックカバーまで着けて下りにかかる。 途中、(自分だけは)滑ったりコケたりしながら、1時間弱で無事に林道まで下る事が出来た。 林道に着く頃にはすっかり雨もあがっており、ぼやいたり今日の行程を振り返ったりしながら、意外に長い林道を鳥井戸の駐車場へ向けて歩いていったのであった。

この後、私とF本氏は鈴鹿スカイラインでポルシェの大群に追いかけられたり、山道では意外に遅いフェラーリの後でイライラしたりしながら、武平峠を越えた先の東樅木谷の滝を見に行ったのであった。

天 候 − 曇り 時々 雨?

コース − 鳥井戸駐車場 → 東海自然歩道 → 井戸谷 → 倍上げ谷 → 林道 → 倍上げ谷 → 神懸 → 倍上げ谷 → 林道 → 鳥井戸駐車場