大日三山

2606m

山域:北アルプス

1998.08.08〜09



姿を表した立山

室堂乗越への登りから別山方面

室堂乗越付近からの剣岳

大日岳からの剣岳


剣岳の肩からの御来光

大日岳山頂より薬師岳を望む

日本一の落差、称名之滝
夏と言えば、やはり日本アルプスである。 雄大な風景、爽やかな稜線歩き、咲き乱れる高山植物等々の夏ならではの魅力が満載だ。 冬でも魅力があるという向きには悪しからず、私は極度の寒がりなので、雪があるというだけで動く気力を失ってしまう体質なのである。 ともあれ、アクセスが容易で、展望が良く、お花畑が期待出来て、更に滝まで見れてしまう、そんな欲張りなコースがこの大日三山の縦走なのである。

そんな訳で、8月7日の20時頃に自宅を出発する。 立山までは北陸自動車道で楽をして、翌1時過ぎにアルペンルート立山駅に到着する。 が、何とここでいきなりアクシデント発生! 当初の予定では称名の滝から大日平経由で大日小屋(泊)、翌日に大日岳〜奥大日岳を縦走し、アルペンルートで楽々お帰りのつもりだった。 しかし、称名の滝への道路が「崖崩れの為、通行止め」となっている。 取り敢えず眠いので、後の事は成り行き任せと寝る事にする。 既に満車の駐車場の隅に何とか場所を確保して、寝苦しい車中泊の一夜を過ごしたのだった。

一夜が開けた6時前、既に行楽客や登山者で賑わい始めた駅前で情報収拾すると、ある売店の親父が「今、土砂の除去作業中で今日中には開通するはず」と言う。 しかし、いつ開通するか分からんのを延々と待つわけにも行かない。 仕方なく室堂からの逆コースに変更する事にした。 既に朝一番のケーブルカーは満席で、7時台の乗車券を購入し、駅の待合室で長い待機に入る(これが嫌で滝からのコースにしたのに、自然とはままならぬものである)。 駅の売店で、「立山まんじゅう」だの「雷鳥せんべい」だのとう感じのみやげ物を見ながら時間をつぶす。 やれやれ、やっと発車時間だー! 通勤電車とあまり変わらない混雑ぶりのケーブルカーで室堂を目指す。 バスへの乗り継ぎも順調に進み、以外と早く室堂ターミナルに到着したが・・・。 そば屋で腹ごしらえしてから外へ出てみると、そこは四方をガスに囲まれた白一色の世界だった。 間近に聳える筈の立山も見えない(T_T)。 肩を少し落としながら、取り敢えず雷鳥平を目指して歩き始める。 するとどうだろう。 神(?)は迷える小羊(?)を見捨てなかった。 雷鳥平の手前で立山方面のガスが晴れ、続いてこれから向かう大日岳方面も姿を見せ始めたではないか。 しばし、雄大な展望を楽しみ、天候の回復を願いながら雷鳥平への急な下りを歩いて行く。 雷鳥平キャンプ場は色とりどりのテントの花が咲いていた。 剣岳への登山者達だろうか。 何にしろ、ここから先は観光客とは無縁の世界だ。

キャンプ場で少し休憩してから、沢を渡ると稜線への登りが始まる。 始めは緩い登りだがハイマツ帯をぬけると別山乗越方面の展望が開ける草原に出る。 登山ガイドによれば、この辺りがお花畑のはずだが、殆ど咲いている花は無かった。 この辺りで少し先行きが不安になるが、ここから結構な急坂になり、花どころでは無くなって来た。 標高差200mの登りで息も絶え絶えになりながら、徐々に高度を上げていく。 何度も立ち止まっては振り返り、雄大な立山の姿を慰めにしては、また苦しい登りを繰り返して行く。 とにかく上を目指して登っていくが、あまりのスローペースのせいか誰もいなかった登山道の遥か下の方に、後続者の姿が現れた。 どうも結構なハイペースらしく、段々と追いつかれて来ているようだ。 少し焦ってペースを上げかけた所で、新室堂乗越に到着した。  ここからは剣岳を右手に見ながらの、快適な尾根歩きが出来るはずだ。 だが、そんな期待も虚しく、右手に見えるのは白一色に立ち込めるガスだけだった(T_T)。 ともかく、奥大日岳に向けてあまりアップダウンの無い稜線を、ゆっくりと歩き始めた。 するとどうだろう。 神(?)は再び迷える小羊(?)の為に、光(?)を遣わされた。 右手方向のガスが急に晴れて、待望の剣岳がようやくその雄姿を表したのだ。 丁度、少し開けた場所に出たので、ここで剣岳を眺めながら大休止する事にした(後から考えるとここが室堂乗越だったらしい)。 行動食のおにぎりを食べたり、剣岳や立山の写真を撮ったりしてゆったりとした時間を過ごす事が出来た。 いつまでもここに居たいとも思うが、いつまでもここに居る訳にもいかないので、奥大日岳に向けてゆっくりと歩き始める。 起伏のあまり無い道を立山や天狗平のパノラマを眺めながら、鼻唄まじりで進んで行く。 カガミ谷乗越を過ぎて、奥大日岳への登りが始まる頃になると、またしてもガスが立ち込め始める。 急な斜面を登って行くに従って、徐々に視界が薄れて行く。 山腹をトラバース気味に登り、稜線に戻るころにはあたり一面は、再び白一色の世界へと戻っていたのだった。 このあたりに点在するというお花畑も、今年の気候のせいで完全に花の時期を過ぎている様で、一本の花も見当たらない。 展望も花も無い、そんな状況の中で第一の目的地である奥大日岳へ到着したのだった。 資料によれば剣岳の大展望のはずだが、見えるのは白、白、白の壁のようなガスと、足元の岩場だけである。 それでも10人程の人々が休憩する山頂で、昼食を摂りながらガスの晴れるのを小一時間も待ってみたが、ますます視界が悪くなるばかりなので、記念写真だけ撮り、先に進む事にした。

稜線上の縦走路を行くが、視界は20mくらいでうっすらと周囲の景色が判別出来る程度だ。 しかも段々とガスが濃くなって来て、ガレた下りに差しかかる頃には周囲の数mが見える程になっていた。 景色も見えず、期待していた花も無いという若干の失望感が疲労につながったのか、何かこのあたりから妙に疲れてきて、5分歩いては立ち止まり、3分歩いては休むといった亀の歩みになっていた。 大日岳方面から来る人達とすれ違う時に、挨拶するのも苦しいような状態になっている。 こんな時には大体、目的地が遠く感じられるもので、最低鞍部からガスの切れ目に見えた七福園の大岩がえらく遠くに思えて、「まだあんなに遠くなのか」とぼやきながら重い身体を運んで行く。 普段ならそれ程にたいした事はなさそうな登りを、ぜーぜーと息を切らしながらやっと七福園へたどり着いた。 なんで七福園なんて名がついたかはわからないが、地面に敷きつめたような大岩の上を、行けそうなルートを探しながら進んで行く。 登りの時はここまで来たら休憩しようなどと考えていたが、こんな場所では落ち着いて休めやしないので、中大日岳の山頂で休憩しようと先を急いでいたら、いきなり道の途中に「中大日岳」の標識があるではないか。 道の真ん中で休憩する訳にもいかんので、仕方なく先へ進むとそこにはもう大日小屋の屋根が見えていた。 やっと今日の宿泊地へ到着だー。 どうせガスで何も見えないので大日岳の山頂は後にして、小屋で休憩する事にした。 

宿泊手続きを終えて、既にだいぶ宿泊者で埋まりかけてきた部屋で一休みする。 やはり疲れのせいで一休みのつもりがひと寝入りになってしまい、一時間程お昼寝タイムになってしまった。 ガスが少し晴れてきた様なので、カメラだけ持って大日岳まで行く事にする。 小屋の外に出てみると、なるほど曇ってはいるがガスはきれいに無くなり、剣岳の岸壁が圧倒的迫力でそびえている。 遥か向こうには雲海の上に白馬岳が顔をのぞかせている。 大日岳山頂には小屋から10分程で到着した。 途中で出会った人によると、さっきまで雷鳥の親子がその辺をうろうろしていたらしい。 少し暗くなりかけていたせいもあり、結局姿を見る事は出来なかった。 大日岳山頂は遮る物の無い360°の展望のはずだが、薬師岳方面はまだガスが残りはっきり見えない。 誰もいない山頂で写真を撮ったり、ぼんやりと景色を眺めたりしていると、日頃身体の中にたまったドロドロした何かが、洗い流されて行くような気がする。 人がやって来たので、小屋に戻る事にする。 ふと気がつくと夕飯に間に合わなくなりそうな時間じゃないか。 あわてて、いや、少し急いで暗くなりかけている道を、大日小屋まで戻ったのだった。 何とか間に合った夕飯を食べ再び外にでると、今日の宿泊客達が暗くなっていく景色を眺めながら、山座同定や思い出話に花を咲かせている。 そんなざわめきを聞きながら剣岳を眺めると、ちょうど早月小屋のあるあたりで明かりが瞬くのがわかった。 遥か離れた白馬岳の頂上でも同じように何かが光っている。 向こう側からはこちらも同じ様に光って見えるのだろうか、それにしても今日あたりの白馬山荘は1畳に二人くらいかな等ととりとめもない事を考えていた。 ここでは今日は1畳一人で済みそうでよかったよかった。 去年の鳳凰小屋みたいな極限状態はもう御免だからな。 ここは今時珍しくランプのともる風情のある小屋だが、眠気には勝てないので早々に寝る事にする。 今日はイビキのうるさいおじさんはいないだろうな、ちゃんと眠れるといいな等と考えているといつの間にか寝入ってしまったようだ。 めでたし、めでたし。

一夜が明ける前の午前3時過ぎ、小屋の中はまだ寝る人と、起き出してご来光を見ようとする人に分かれていた。 そういう自分もご来光を見る為、ヘッドランプをつけカメラ片手にいそいそと外へ出て行く。 大多数の人は小屋の前で待つようだが、こんな時こそ人のいない所を狙い、大日岳山頂で待つ事にした。 狙い通り山頂には誰もいない。 岩に腰掛けて静かに日の出を待つ。 東の空が白み始めてあたりが明るくなってゆく。 やがて剣岳の肩のあたりから、ご来光が顔をのぞかせる。 日頃見慣れているはずの太陽が、新鮮に、神聖に見える瞬間であった。 夢中でシャッターを押すが、なんせ手持ちで撮影しているので、出来の方ははなはだ不安ではある・・・(結果オーライだったが、小さくても三脚は必要だなー)。 明けてゆく北アルプスの山々を楽しみながら、いつまでもここに居たいと思ったが、朝食の時間も迫って来たので、またまた急いで小屋へ戻ったのだった。
朝食も済ませ、今日の行程は称名の滝まで下るだけだ。 とはいえ、下りが極端に苦手な自分にとっては、どうなる事やら不安もあるのだが・・・。 そんな気分をよそに、外の天気はすこぶる快晴で、何かとても暑くなりそうな予感である。 さあ出発と気合をいれてみれば、荷揚げのヘリが来るので小屋の中で待機してくれ、と言われ出端をくじかれる。 たかをくくって外に居た人の中には、荷物を飛ばされてあわてる人もいたようだ。 さあ、今度こそ出発だー。 大日平までの下りは、終始、薬師岳を正面に眺めながらの快適?な下りのはずである。 しかし、自分にとっては実に長い嫌な下りだった。 通常、一時間半程度のコースタイムのはずが、二時間半もかけているのがその証拠である。 途中で何度も休み、後から来る人に抜かれながらも、遥か下にポツンと見える大日平山荘まで下っていったのだった。 こんな時は、先が見え過ぎると、かえって嫌なものなのだ。 いっそ見えない方がいいのだが、薬師岳は素晴らしかったので、やはり見えていてよかったとしておこう。

大日平山荘には誰もいなかった。 宿泊客はまあ当然ながら出発したとして、小屋の人間も出払っていて文字通り誰もいなかった。 こんなところにまである自販機のジュースで水分を補給し、一息ついたところでふと見ると、「不動滝20分」と書いた標識が小屋の向こうにあるではないか。 改めて地図を見ると、確かにそれらしい滝があるようだ。 行きたいと思ったが、道の状況も判らんし、訊ねる人もおらず、下りでの疲れ具合を考え今回はパスする事にする(って言うても次回がいつになるかは判らんが・・・)。 重い腰をあげて、大日平の木道を歩き始める。 そろそろ下から登って来る人とすれ違うようになって来た。 人が来るって事は、道が開通したって事で、誠にめでたい事ではあるが、狭い木道でのすれ違いは、何度も続くと誠に鬱陶しい。 それでも牛ノ首あたりまでは快調に歩く事が出来たのだが、ここから始まる称名坂の急降下には少々まいってしまった。 普通の人ならなんてことない下りなのだろうが、間の悪い事に持病(という程でもないが)の膝の痛みがとうとう出現なさったのだ。 何とか歩き続けたが、疲労と膝の痛みで、猿ケ馬場を過ぎたあたりでバテてしまい、道端の空き地を見つけへたり込むようにして休憩をとった。 水分補給と行動食で少しは回復したので、これまで以上に慎重にゆっくり下るようにした。 それにしても、こちらを登りに選ぶ人はあまりいないと思っていたら、意外にも多くの人が登って来るではないか。 大体のガイドには室堂からの下りルートがメインになっているのだが。 へそ曲がりな人も多いものである(ほっとけ、っていうかお前も最初はその口だっただろう・・・)。 沢の音が大きくなり、ようやく舗装道路に飛び出した。 称名の滝の遊歩道である。 いままでとは打って変わって、軽装の観光客が続々と歩いてくる。 しばらく休憩した後、ザックをデポして滝まで歩いて行く。 おおっ、ちょろちょろとはいえハンノキ滝がながれているぞ、こりゃラッキー。 と思ったのも束の間で、次から次へと押し寄せる観光客の波に、次第に滝の素晴らしさよりも、阿呆らしさのほうが先にたってきた。 滝自体は、流石に素晴らしく、水量も豊富で飛沫がすごい。 ただ、動き回れる範囲が限られているので、どうしても観光客達が目障りになって来るのだ。 それでもレンズにかかる飛沫をぬぐいながら小一時間も撮影してから、バス停へ向かったのだった。 バスを待つ間、今回の山行を振り返ってみると、高山植物は見られなかったものの、剣岳や立山の展望やご来光を見る事が出来てなかなかいい山行だったのではないだろうか。 あとは、妻のまつ自宅まで無事帰る事だけを目指そう、そんな事を考えながら立山駅行きのバスに乗り込んだのだった。                                                         

天 候
8月8日 − 曇り 時々 薄曇り
8月9日 − 晴れ後曇り

コース

8月8日 − 室堂バスターミナル → 雷鳥平 → 室堂乗越 → 奥大日岳 → 中大日岳 → 大日小屋 → 大日岳
8月9日 − 大日小屋 → 大日平 → 称名ノ滝